内部レビュー(Internal Review):PIC前に争点を整理する段階
治療不承認、週次給付停止、就労能力評価、threshold injury(軽傷)やWPI判定で不利な判断を受けた場合、内部レビューは多くの案件で必須の前段です。 NSW CTPでは、この段階で保険会社の決定理由を分解し、対応証拠をそろえておくことが、その後のPIC申立ての精度を大きく左右します。この記事は一般的な情報提供であり、実際の結果は証拠、決定通知の内容、適用期限によって変わります。
結論からいうと
NSW CTPの内部レビューは、保険会社の判断をそのまま受け入れる前に、決定理由ごとに証拠を当てて見直しを求める正式手続です。 まず期限を確認し、次に保険会社の理由を1項目ずつ整理し、その理由に対応する医療資料、能力資料、賃金資料、時系列を整えることが基本です。
ここで準備が弱いと、後でPICに進んでも論点整理からやり直しになりやすいので、内部レビューは単なる前置きではなく実務上かなり重要な段階です。
まず期限確認:28日を一律ルールと考えない
期限は争点類型、決定通知の文言、適用ルールで変わります。28日は代表的ですが一律ではありません。 通知を受けたら、先に締切と根拠規定を確認してから証拠収集へ進んでください。
内部レビューの位置づけ
内部レビューは単なる苦情窓口ではなく、保険会社判断の正式な再審査です。多くのCTP紛争では PIC 申立前にこの段階を経る必要があります。
実務では「不服だ」と書くだけでは弱く、保険会社理由に対応した証拠設計が不可欠です。特に、何を理由に不利判断がされたのかを分解せずに提出すると、後でPICに進んだときに論点整理で時間を失いやすくなります。
そのため、この段階では「何を争うのか」「どの資料がその争点に対応するのか」「不足している証拠は何か」を明確にし、将来の申立資料にも使える形で残しておくのが実務的です。
強い申請にするには:争点別に証拠を組み立てる
強い内部レビュー申請は、長い説明文よりも、保険会社の各理由に対して対応証拠が一目で分かる構成になっています。通知書、時系列、添付資料一覧を先に整えるだけでも説得力が変わります。
- 対象決定を特定:通知日、決定番号、争点範囲を明示する。
- 項目別に反論:保険会社理由に1対1で対応する。
- 週次給付や収入争点:給与記録、税務資料、雇用主資料、能力証明の時系列をそろえる。
- 治療争点:主治医意見、紹介状、画像所見、合理性と必要性を支える資料を出す。
- 就労能力争点:現時点の制限、復職計画、リハビリ記録、IMEとの差分を整理する。
- thresholdやWPI争点:法的分類に直結する専門医意見と臨床記録を優先する。
たとえば、週次給付停止の争い と就労能力の争い は関連しますが、収入資料と医療資料を混ぜすぎない方が後で整理しやすくなります。 治療不承認なら 治療不承認の争い、thresholdやWPIならthreshold injuryの争い やWPI評価 を並行して確認しておくと、必要資料の方向性がつかみやすくなります。
内部レビューで想定される結論
- Affirm:原判断を維持。
- Vary:一部変更。ただし主要争点が残る場合があります。
- Overturn:原判断を覆して有利変更。
一部有利でも争点が残ることは珍しくありません。提出資料とやり取りの時系列は必ず保存してください。
たとえば治療承認だけ見直されても、週次給付やPAWEの論点が別に残ることがあります。その場合は、PAWE計算の争い やPICでの争点分類 を早めに確認し、次段階の準備を止めないことが大切です。
失敗しやすいパターン
- 短い抗議文だけで、争点別証拠が不足している。
- 治療、就労能力、週次給付、PAWEを混在提出している。
- 決定書、提出記録、医療資料、賃金資料の時系列が欠けている。
- 締切直前に着手し、証拠の質と網羅性を落としてしまう。
- 保険会社のIME意見を決定打だと思い込み、主治医側の補強資料を出していない。
IMEが争点になっているなら、IME対応の準備ポイント を踏まえて、主治医意見や経過記録で差分を埋める余地があるかを見直す価値があります。
結果が不利だったときのPIC移行
内部レビュー後も不利なら、争点ごとに正しい経路でPICへ進むことが重要です。特に週次給付、収入喪失、医療争点が重なっている案件では、同じ資料でも PAWE(事故前平均週収入)の争い と 就労能力の争い を分けて整理した方が、後の申立てで筋道が通りやすくなります。
また、保険会社がIMEを重く見て不利な判断をしているなら、 IME対応の準備ポイント を確認したうえで、 merit review と medical assessment の違い を見誤らないことが大切です。医療評価が中心なら PICの医療争点ガイド も先に読んでおくと流れがつかみやすくなります。
決定通知書を読んだ直後に分けるべきこと
内部レビューで最初にすることは、感情的に反論を書くことではなく、決定通知書を「何を決めたのか」「なぜそう判断したのか」「いつまでに何を出す必要があるのか」に分けることです。 同じ通知の中に、治療費、週次給付、就労能力、threshold injury、PAWEなど複数の論点が混ざっていることがあります。ここを混同すると、正しい証拠を出していても、どの争点に対応しているのかが伝わりにくくなります。
実務上は、通知書の理由を表にして、各理由の横に「必要な証拠」「誰から取るか」「未取得の資料」「提出済みか」を書き出すと整理しやすくなります。日本語で事情を説明する場合でも、最終提出資料では英語の医学用語、診断名、就労能力証明書の表現と矛盾しないように合わせることが重要です。
医師・雇用主・保険会社への確認ポイント
治療や就労能力が争点なら、医師には「診断名」だけでなく、事故との関連性、現在の制限、治療の目的、代替治療を試したか、復職に必要な条件を確認します。週次給付やPAWEが争点なら、雇用主資料、給与明細、ロスター、休職・復職の記録、事故前後の勤務変化をそろえます。
保険会社へ追加資料を送るときは、添付ファイルをただ並べるのではなく、各資料がどの理由に対応するのかを短く説明してください。たとえば「この診断書は治療の必要性を示す資料」「この給与記録は事故前収入を示す資料」という形にすると、内部レビュー担当者が争点を追いやすくなります。
一部だけ有利になった場合の注意点
内部レビューの結果が一部有利でも、そこで全てが解決したとは限りません。治療費は認められたが週次給付は止まったまま、就労能力は一部変更されたがPAWE計算は変わらない、threshold injuryは維持されたが別の医学争点が残る、といった形があり得ます。
その場合は、何が変わり、何が残り、次にどのPIC経路へ進む必要があるかを分けて確認します。特に期限が複数走っている案件では、一つの結果に安心して別の期限を落とさないよう、決定日、内部レビュー結果日、提出済み資料、未解決争点を一枚の時系列に残しておくことが安全です。
提出パックの作り方:長文より対応表を優先する
内部レビューでは、長い説明書を一つ出すよりも、保険会社の理由と証拠を対応させた短い表を付ける方が実務的です。 たとえば「理由1:治療が合理的でない」と書かれているなら、その横に主治医意見、治療計画、過去の改善記録、代替治療を試した事実を並べます。 「理由2:就労能力がある」と書かれているなら、capacity certificate、職務内容、勤務時間、実際に試した復職内容、症状悪化の記録を分けます。
日本語で相談内容を整理している場合でも、提出パックでは英語資料の名称をそのまま残すと安全です。capacity certificate、IME report、PAWE、threshold injury、medical assessment などの用語を勝手に言い換えすぎると、後でPICへ進むときに同じ資料を追いにくくなります。
期限に間に合わないとき:何を先に出し、何を追完するか
診断書や雇用主資料が締切までに揃わないことはあります。その場合でも、期限を無視して全資料が揃うまで待つのは危険です。 まず対象決定、争う範囲、現在入手済みの資料、未取得資料と取得予定日を明記し、提出記録を残すことを検討します。追加資料を後から出す場合も、どの争点を補う資料なのかを説明して送る必要があります。
期限延長や追加提出が認められるかは状況によります。重要なのは、締切前に動いた証拠、資料請求の記録、医療機関や雇用主へ依頼した日付を残すことです。後で遅れを説明する必要が出たとき、単に「忙しかった」ではなく、合理的に動いていたことを示せる形にしておきます。
PICを見据えた保存方法
内部レビューで提出した資料は、その後のPIC申立てでも使う可能性があります。提出済みPDF、メール本文、アップロード画面、受領確認、保険会社からの返信は、日付順に保存してください。 ファイル名も「2026-06-15 treating doctor certificate」「2026-06-16 employer roster」のように日付と内容が分かる形にしておくと、後で証拠を組み直しやすくなります。
特に医学争点と収入争点が混ざる案件では、同じ日に届いた資料でもフォルダを分ける方が安全です。medical、capacity、PAWE、treatment、correspondence のように分けておけば、merit review と medical assessment のどちらに進むべきかを検討するときにも、必要な資料をすぐ取り出せます。
よくある質問
- 内部レビューでは何を書けばよいですか?
- 対象決定、争う理由、各理由に対応する証拠、提出日と添付一覧を明確にするのが基本です。単に「納得できない」と書くだけでは弱くなりがちです。
- 新しい診断書がまだ揃っていない場合でも動くべきですか?
- まずは期限確認が先です。資料不足が見込まれるなら、通知内容を確認しつつ、何が不足しているかを早めに整理して追加取得を進める方が安全です。
- 内部レビューとPIC申立ては同じ準備で足りますか?
- 重なる資料は多いですが、PICでは争点分類や提出構成がより重要になります。内部レビューの段階から時系列と争点別整理をしておくと移行が楽です。