NSW州CTP補償ガイド:休業補償・治療費・慰謝料を含む一時金賠償
NSWの交通事故でけがをした場合、受けられる補償は主に、軽傷か非軽傷か、WPI、過失割合の3要素で大きく変わります。最初に確認すべきなのは、週次給付がどこまで続くか、治療費がどこまで認められるか、そして慰謝料を含む一時金賠償まで進める条件があるかです。本ページでは Motor Accident Injuries Act 2017 に沿って、その見分け方と実務上の注意点を日本語で整理します。一般情報のみ。
要点
NSWの交通事故でけがをした場合、受けられる補償は主に、軽傷か非軽傷か、WPI、過失割合の3要素で大きく変わります。最初に確認すべきなのは、週次給付がどこまで続くか、治療費がどこまで認められるか、そして慰謝料を含む一時金賠償まで進める条件があるかです。本ページでは Motor Accident Injuries Act 2017 に沿って、その見分け方と実務上の注意点を日本語で整理します。一般情報のみ。
このガイドの考え方
このページは、NSW CTPの期限、証拠、保険会社対応、紛争ルートを誇張せずにわかりやすく整理するために作られています。
一般的な情報であり、個別の法的助言ではありません。見通しは事実関係、証拠、保険会社の対応、期限によって変わります。
公的な制度資料と法令の土台
このページの実務説明を補強する公的ソースです。個別助言の代わりではありませんが、制度の原典を確認したいときに役立ちます。
先に確認したい質問
PAWEはどう計算されますか?
通常、事故前12か月のgross週平均収入で算定し、基本給だけでなく残業・手当・ボーナスも含めて確認します。現職在籍が12か月未満なら通常は在籍期間平均です。
WPIが10%ちょうどでもNELを請求できますか?
一般に難しく、通常は10%超(少なくとも11%)が必要とされます。
法定給付の争いで弁護士費用はどうなりますか?
争点と結果次第ですが、法定給付の一部争いでは成功時に保険会社が定額の費用負担を求められることがあります。
1)法定給付:休業補償(週次給付)と治療・ケア費
法定給付は、事故直後の収入と治療を支える枠組みです。最初の52週間は原則として無過失給付の性質があります(重大な運転違反等を除く)。
週次収入給付(PAWE)
就労不能または労働能力低下がある場合、給付は PAWE(事故前平均週収入) を基準に計算されます。PAWEは通常、事故前12か月のgross収入平均で、基本給だけではありません。
PAWEには基本給、恒常的な残業、各種手当、ボーナスを含めるのが原則です。保険会社が残業・手当・ボーナスを除外して過少計算する例があり、給与明細・PAYG/税務資料・雇用記録で突合が必要です。
- 最初の13週:通常はPAWEの95%まで。
- 14〜52週:通常はPAWEの80%または85%(労働能力による)。
- 52週以降:通常は非軽傷で、かつ主たる過失者でないこと等が継続条件になります。
治療費・ケア費
保険会社は「合理的かつ必要」な治療・リハビリ・介助費を負担します。争点は、治療の適合性、SIRA料金枠との整合、医学的有効性です。
差額自己負担:専門医費用がSIRA基準を超えると差額自己負担が生じる場合があります。受診前の料金確認が重要です。
高額治療の拒否は、肩手術の争いや治療拒否の争点ページを参照してください。
先に押さえる3点: 事故直後は週次給付と治療費、52週前後では軽傷か非軽傷かの区分、和解前にはWPIと将来就労能力の評価が重要です。どの段階でも、診断書、給与資料、就労制限、今後の治療見込みを同じ筋道でそろえることが後の補償額に直結します。
2)損害賠償(一時金):最終解決金の考え方
一時金の損害賠償は通常、一回限りの最終解決金です。一般に、非軽傷であり、他者過失があることが前提になります。
逸失利益(過去・将来)
賠償額の中心は逸失利益で、事故日から退職年齢までの賃金損失、将来の労働能力低下、さらに雇用主によるスーパーアニュエーション拠出の喪失まで含めて評価します。
和解前の確認:提示額を検討するときは、復職制限の長期化、再手術リスク、職種変更の必要、スーパーアニュエーション損失が十分反映されているかを必ず確認してください。書面上の簡易計算だけでは低く出ることがあります。
Fox v Wood 型の税務調整
補償関連支払いに伴う源泉税の調整問題が生じる事案があります。技術的で事実関係にも左右されるため、和解前に精査すべき論点です。Fox v Wood解説を参照してください。
非経済的損失(NEL, いわゆる慰謝料に近い項目)
痛み・苦痛等の非経済的損失は、WPIが10%超(少なくとも11%)でないと通常は請求対象になりません。
NELの上限について:制度上の上限額は最重度の後遺障害を想定したもので、すべての事案で近づくわけではありません。実際には、けがの重さ、将来制限、類似判断例、医証の質で幅が出ます。脊髄損傷や重度脳損傷のような重大事案と同列には考えません。
3)補償額の評価:実務で重い4変数
オンライン計算機だけで確定額は出ませんが、最終金額は次の4変数に大きく左右されます。
- PAWE:平均週収入が高いほど逸失利益の基礎額が上がる傾向。
- WPI:10%から11%への変化はNEL請求可否を左右しうる。
- 将来就労能力:元職復帰困難なら将来逸失利益が増える。
- 過失相殺:本人過失が認定されると最終金額は比例減額。
これらは保険会社と争いになりやすく、早期の医証、収入資料、責任資料の整備が重要です。
重いけがや手術が絡む場合は、脊椎固定術の請求や脊髄損傷の請求も比較すると、将来損失やケア費の見方がつかみやすくなります。
過失割合は過失相殺ガイドを参照し、軽傷評価に争いがある場合は上位傷害戦略、WPIしきい値の確認はWPI 10%基準も確認してください。
よくある質問
- PAWEはどう計算されますか?
- 通常、事故前12か月のgross週平均収入で算定し、基本給だけでなく残業・手当・ボーナスも含めて確認します。現職在籍が12か月未満なら通常は在籍期間平均です。
- WPIが10%ちょうどでもNELを請求できますか?
- 一般に難しく、通常は10%超(少なくとも11%)が必要とされます。
- 法定給付の争いで弁護士費用はどうなりますか?
- 争点と結果次第ですが、法定給付の一部争いでは成功時に保険会社が定額の費用負担を求められることがあります。
- 一時金賠償で和解すると週次給付は止まりますか?
- 通常、経済損失を含む一時金賠償で和解すると、その後の週次給付は終了します。和解書の範囲と将来損失の前提を必ず確認してください。
- 手術費は常に「合理的かつ必要」ですか?
- 自動的ではありません。因果関係・必要性・専門医意見が必要で、IME意見を理由に争いになることがあります。
- 軽傷だと一時金は期待できますか?
- 通常は難しく、権利は主として法定給付(週次給付・治療費)に限定されます。
- スーパーアニュエーション損失も請求できますか?
- 将来逸失利益を請求できる一時金賠償案件では、雇用主によるスーパーアニュエーション拠出の喪失を含めて検討するのが通常です。
- 退職者でも請求できますか?
- 週次収入給付は通常対象外ですが、治療・ケア費は請求可能性があり、要件を満たせばNELの検討余地もあります。