上肢の傷害
交通事故による肩の傷害:NSW CTP の分類と WPI
交通事故による肩の傷害には、骨折、脱臼、肩鎖関節、関節唇、腱板、関節包など複数の構造が関係します。まず傷ついた構造を特定し、自動可動域、安定性、画像所見を事故の外力と照合することが重要です。
このページは NSW CTP に関する一般情報であり、法律・医療上の助言ではありません。基準傷害、後遺障害率(WPI)、損害賠償は別の問題であり、事故状況、医学資料、現行ルールに基づいて個別に判断されます。

事故と診断
交通事故でどのように生じる傷害か
車内での衝突
シートベルト、ハンドル、ドア、ダッシュボードからの外力により、肩の傷害や周囲の骨・腱・靱帯を損傷することがあります。
バイクからの転倒
手をつく、肩や腕から着地するなどして、骨折、脱臼、断裂、関節拘縮が生じることがあります。
歩行者・自転車事故
車両との直接接触や転倒時のねじれ・圧迫により上肢の構造を損傷することがあります。
実際に生じ得る傷害
- 上腕骨近位部、肩甲骨、鎖骨の骨折
- 肩関節・肩鎖関節の脱臼、亜脱臼、不安定性
- 腱板、関節唇、関節包、腱の損傷
- インピンジメント、癒着性関節包炎、長期拘縮
主な症状と生活への影響
- 腕を上げる、着替える、洗髪するときの痛み
- 脱力、引っ掛かり、クリック、不安定感
- 夜間痛と患側を下にして眠れない状態
- 自動可動域の持続的な低下
早急な受診が必要な症状
疼痛防御、体幹による代償、他動可動域だけの記録では、永続的な障害を信頼して測れません。
医学的証拠
評価で重視される検査所見
肩の傷害は痛みの強さや画像上の名称だけでは評価できません。事故直後の症状、再現性のある客観所見、画像・手術所見、治療経過、安定した現在の機能制限を一連の資料として確認します。
| 検査・資料 | 確認できること | それだけでは決められないこと |
|---|---|---|
| 肩関節の自動可動域 | 屈曲、伸展、外転、内転、内旋、外旋をゴニオメーターで測り、健側と反復測定を比較します。 | 疼痛防御、体幹による代償、他動可動域だけの記録では、永続的な障害を信頼して測れません。 |
| X線・CT・MRI・超音波 | 骨折、関節、腱、靱帯、軟骨、神経周囲の構造を確認し、初期診療記録と比較します。 | 画像所見だけでは、事故との因果関係、永続性、WPI の数値は決まりません。 |
| 整形外科・リハビリ科・神経科の診察 | 自動可動域、安定性、感覚、筋力、反射、歩行、事故との因果関係を記録します。 | 一時的な疼痛防御や概括的な「筋力低下」は、有効な評価法の代わりにはなりません。 |
基準傷害
基準傷害に該当する可能性
構造的断裂を伴わない肩の捻挫、打撲、軟部組織痛は基準傷害に該当することがあります。画像と専門診察で確認された骨折、脱臼、神経損傷、腱の部分/完全断裂は非基準傷害を裏付け得ますが、事故との整合性が必要です。
後遺障害評価
NSW CTP における WPI の評価方法
肩の傷害の WPI は、Motor Accident Guidelines Part 6 で認められた方法のうち、残存する永続的な機能障害に最も適したものを用います。根拠は Motor Accident Guidelines v10.1 clauses 6.47-6.57 and 6.67; AMA4 section 3.1, Figures 36-44 and Table 3, only as modified by Part 6. です。事故との因果関係、既往障害、症状の安定、重複評価も検討します。
| 評価方法 | 根拠 | 用いられる場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 肩関節自動可動域法 | Motor Accident Guidelines v10.1 clauses 6.47-6.57 and 6.67; AMA4 section 3.1, Figures 36-44 and Table 3, only as modified by Part 6. | AMA4 Figures 36–44 により各運動面の再現性ある自動可動域制限を測定し、Part 6 の規則で換算します。 | 腱板断裂や手術だけで固定率を当てはめたり、同じ運動制限を類似方法で重複加算したりすることはできません。 |
| 因果関係・安定性・既往障害 | Motor Accident Guidelines clauses 6.19–6.24 | 現在の障害が事故によるものか、十分に安定しているか、証拠のある既往障害を控除すべきかを判断します。 | 画像に変性があるというだけで自動的に控除することはできません。 |
| 上肢障害から WPI への換算 | AMA4 Table 3(Part 6 による修正を含む) | 有効な upper extremity impairment を WPI に換算します。 | 診断名、手術、可動域を重ねて加算できません。 |
可動域や機能制限が日常生活で意味すること
- 屈曲:前方に腕を上げて棚の物を取る
- 外転:横から腕を上げ、袖に通す
- 外旋:洗髪する、手を後頭部へ回す
- 内旋:手を背中へ回して着替える
重複して合算できないもの
- 同じ運動制限を二つの上肢方法で重複評価できません
- 独立した別傷害でない限り、末梢神経値と同じ構造障害を重複加算できません
- 上肢の strength Table 34 は使用できません
0%または評価対象外となり得る場合
- 肩の傷害が回復し、再現性のある永続的な機能障害が残っていない
- 痛みや画像上の名称だけで、信頼できる客観所見がない
- 事故以外の状態で所見がより合理的に説明される
裏付けがあれば評価に影響し得る要素
- 肩の傷害について一貫し、再現性があり、安定した客観的機能障害がある
- 骨折、断裂、神経損傷、手術後遺症が画像と専門医資料で裏付けられる
- 事故前後の資料により既往状態と事故後の変化を区別できる
それだけでは通常足りないもの
- 角度測定のない「肩痛」だけの記録
- 事故後の臨床変化を伴わない MRI 上の変性
- 手術名だけの評価
- 再測定されていない疼痛依存の一回の測定
具体的な検討例
画像所見はあるが診察所見が軽い場合
肩の傷害が MRI や X 線に写っていても、自動機能、安定性、神経診察がほぼ正常であれば、画像だけで高い WPI になるわけではありません。
治療後も安定した機能制限が残る場合
十分な治療後も信頼できる検査で永続的な制限が確認されれば、該当方法で評価します。ただし手術名や症状だけで固定率は決まりません。
資料の準備
証拠チェックリスト
- 事故直後の救急、GP、専門医記録
- 因果関係や控除が争われる場合の事故前の同部位資料
- 治療、リハビリ、就労能力の記録
- 保険会社の決定書、IME、PIC 資料
- 連続した肩自動可動域表
- MRI/超音波と X 線の画像・報告
- 整形外科または肩肘専門医の診察
- 手術記録、リハビリ経過、日常機能資料
保険会社の決定を受け取った後の対応
まず、その決定が治療、基準傷害、WPI、就労能力、損害賠償のどれを扱っているかを分けます。異なる争点を一つの一般的な反論にまとめず、理由ごとに医学資料を対応させることが重要です。
1
決定理由を確認する
決定日、再審査の案内、保険会社が用いた診断と資料を特定します。
2
医学資料の不足を補う
主治医や専門医に、因果関係、客観所見、治療、残存機能を理由付きで説明してもらいます。
3
手続期限を守る
内部再審査や PIC の手続を早めに確認し、治療継続で期限が延びると考えないでください。
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よくある質問
- 肩の傷害は必ず非基準傷害ですか?
- いいえ。分類は痛みの強さではなく、証拠のある構造的診断によります。軟部組織損傷は基準傷害の可能性があり、骨折、神経損傷、該当する断裂には医学的裏付けが必要です。
- 肩の傷害の WPI はどのように評価されますか?
- Motor Accident Guidelines Part 6 で認められた肩関節自動可動域法を用い、因果関係、安定性、既往障害を検討します。症状や手術名から数値を逆算することはできません。
- 手術を受けると WPI は必ず上がりますか?
- いいえ。手術記録は重要ですが、評価対象は治療後も残る永続的な機能障害と適用可能な評価法です。
- 画像検査だけで十分ですか?
- 十分ではありません。画像は事故後の症状、診察所見、機能変化と整合し、適切な医師が因果関係を説明する必要があります。
- 保険会社が診断や評価に同意しない場合は?
- 決定理由と根拠資料を取り寄せ、内部再審査、追加の専門医資料、適切な PIC の医学的紛争手続を検討します。手続と期限は決定の種類によって異なります。
内容確認日:2026年7月31日. このページは NSW CTP に関する一般情報であり、法律・医療上の助言ではありません。基準傷害、後遺障害率(WPI)、損害賠償は別の問題であり、事故状況、医学資料、現行ルールに基づいて個別に判断されます。