就労能力争い(NSW CTP):『働ける』という判断を証拠で組み替える
保険会社が『働ける』『earning capacity がある』として週次給付を減額・停止する場面では、痛みの強さだけを繰り返しても足りません。実際に重要なのは、何時間なら働けるのか、どの職務なら無理なのか、通勤や姿勢保持にどんな制限があるのか、復職がなぜ維持できなかったのかを、理由ごとに証拠で示すことです。
先に結論
就労能力を理由に週次給付を切られたら、決定書の各理由を分解し、主治医の機能評価、職務内容、賃金記録、復職失敗の経過を一点ずつ対応させて内部レビューを出すのが基本です。期限が迫るなら、まず権利保全の提出をしてから補充資料を追送します。
クイックナビ
最初に押さえる4点
- 争点は病名そのものより、機能制限と現実の職務適合性にあります。
- 証拠は保険会社の理由を一点ずつ崩す構成にしないと伝わりにくいです。
- 78週前後は週次給付ルールの影響が表面化しやすく、判断の重みが増します。
- 就労能力、PAWE、治療、PICの争点は並行しやすいため、資料の整合性が不可欠です。
このページをこう構成している理由
このページは、NSW CTPの論点をわかりやすく整理し、請求者が実際に直面しやすい争点を踏まえつつ、結果を誇張しない形で構成しています。
一般的な情報であり、個別の法的助言ではありません。見通しは事実関係、証拠、保険会社の対応、期限によって変わります。
このページの公的な背景
以下の公的資料は、このガイドの背景となる法制度と手続の枠組みを示しています。個別の助言に代わるものではありませんが、重要なルールや見直し経路を正しく理解する助けになります。
不利な就労能力決定を受けた直後の進め方
決定理由を抽出する
決定書、IME、リハビリ報告、最近の診断書を並べ、保険会社がどの理由で『働ける』としたのかを1枚に整理します。
証拠を論点別に当てる
主治医の機能制限、雇用主の職務内容、賃金記録、復職失敗の経過を、各理由に対応する形で番号付けします。
期限内に内部レビューを出す
『理由、反証資料、求める修正結果』の順でまとめ、期限が短い場合はコア資料だけでも先に提出して権利を守ります。
未解決ならPIC経路へ進む
内部レビューで解決しないときは、争点の種類に応じてPICの適切な経路へ進み、資料束を医療・収入・手続に分けて整えます。
1)まず『何を認定されたか』を分解する
current work capacity や earning capacity という表現でも、実際には『労働時間を増やせる』『別職種に就ける』『減収は小さい』『フルタイム相当で働ける』など、複数の判断が混ざっていることがあります。どの判断なのかを見分けないと、必要な反証資料もずれてしまいます。
同じ決定書に就労能力、PAWE、治療論点が混在している場合は、最初に論点を分けてください。ひとつの反論文に全部を混ぜると、どの論点をどの手続で争うのかが見えにくくなります。
- 就労時間の認定を争うのか
- 職務内容や代替職種の前提を争うのか
- 収入影響の見積もりを争うのか
- 手続の種類そのものが誤っていないか
2)どんな証拠が実際に効きやすいか
主治医意見は、単に『就労不可』と書くだけでは足りないことがあります。座位や立位の許容量、反復動作の限界、通勤耐性、集中持続時間、薬剤副作用、必要な休憩頻度まで具体化できると、保険会社の仮定へ直接応答しやすくなります。
復職して維持できなかった事実は強い証拠です。『どの勤務を試したか、何日続いたか、何ができなかったか、その後に症状や受診状況がどう変わったか』を時系列で示すと、保険会社の前提が現実に合わないことを伝えやすくなります。
- 機能制限を示す主治医意見や診断書
- 職務内容、立ち仕事、運転、PC作業などの実際の負荷資料
- 給与明細、出勤記録、減収を示す賃金資料
- 復職試行と失敗の経過メモ、雇用主や治療者の記録
3)IMEが決定を動かしている場合の見方
保険会社がIME意見を強く使っているなら、その結論だけでなく前提事実も確認してください。受診時間が短い、職務内容の理解が浅い、既往歴や通勤負担が十分に反映されていないといった問題があることがあります。
反論するときは『IMEは間違っている』と抽象的に言うより、主治医意見や勤務実態資料で、どの部分が実情と合わないかを示す方が効果的です。IMEの説明不足があるなら、その点を明示して資料を当ててください。
- IMEが前提とした職務が実際の仕事と一致しているか
- 通勤時間、姿勢保持、反復動作、薬剤副作用が評価されているか
- 検査所見と日常機能のつながりが丁寧に説明されているか
4)不利決定から最初の14日でやること
1〜3日目は、決定書、IME、最近の診断書、給与・勤務実績を回収し、保険会社の理由を1ページに並べて見える化します。4〜7日目は、各理由ごとに対応する証拠番号を割り当て、抜けている資料を主治医や雇用主へ依頼します。
8〜14日目は、内部レビュー提出を『理由、証拠番号、求める修正結果』の順でまとめます。期限が7日未満なら、まず権利保全のコア資料を出し、補充日程を明記してください。完璧を待って期限を逃す方が危険です。
5)78週前後で失点しやすいポイント
78週前後は、保険会社が就労可能性をより強く主張しやすく、週次給付への影響も意識されやすい局面です。医療資料だけを出して賃金や職務の証拠を補わないと、機能制限が実際の減収や就労不能にどうつながるのかが伝わりません。
よくある失点は、医師証明では短時間勤務しか無理と書いているのに、雇用主資料ではフルタイム配置が可能なように読めることです。提出前に全部の資料を横に並べ、同じストーリーになっているかを確認してください。
6)内部レビュー後も争いが残るとき
PICへ進む前は、A:決定書と期限資料、B:医療と機能資料、C:収入と職務資料、という3層で束ねると読みやすくなります。各層に目次とページ番号を付けるだけでも、審査の通り方はかなり変わります。
治療拒否やPAWE争点が併存する場合は、手続を分離しつつ、事実関係の説明は揃えてください。重要なのは資料の厚さではなく、論点ごとにどの証拠が何を示すかが一目で分かることです。
よくある質問
主治医が『就労不可』と書けば十分ですか?
十分とは限りません。どの作業が何時間できないのか、保険会社の理由にどう反論するのかまで具体化する方が有効です。
復職失敗の記録は本当に役立ちますか?
はい。保険会社の想定と現実の就労結果の差を、最も具体的に示せる資料のひとつです。
就労能力争いは週次給付だけの問題ですか?
いいえ。PAWE、治療の扱い、PICでの争点整理にもつながることがあります。
期限直前で資料がそろいません。どうすべきですか?
まず期限内にコア資料を提出して権利を守り、補充提出の予定を明示してください。期限徒過の方が大きな不利益になりやすいです。
IMEの内容に納得できないときは?
抽象的に否定するのではなく、主治医意見、職務資料、通勤や症状の実態を使って、どの前提が現実と違うのかを具体的に示します。
実務で負けやすいパターンは何ですか?
論点に合わない資料を大量提出すること、資料同士が矛盾していること、就労能力とPAWEや治療論点を混線させることです。
本ページは一般的な情報であり、個別事案への法律助言ではありません。事実関係、証拠、期限によって適切な対応は変わります。