PIC ケースノート
Raad v Nominal Defendant [2026] NSWPIC 173:相手車両を特定できなくても、調査の中身が整っていれば請求は残る
この判断が大事なのは、「見つからなかった」という結果より、「どこまで現実的な調査をして、どう記録したか」が中心だと示した点です。
一般情報であり、法的助言ではありません。保険会社から「相手車両を探す努力が足りない」と言われている案件で特に参考になります。
結論を先に
このケースの要点は明快です。NSWの相手車両不明事故では、完璧な結果までは求められていません。早く動き、現実的な手掛かりを追い、調査経過を日付付きで残していれば、車両を特定できなくても請求が認められる余地があります。
何が起きたか
申立人は、加害車両が特定できないため、政府補償制度(Nominal Defendant)を通じて法定給付を請求しました。争点は第2.30条の「相当な調査・探索」を満たしたかどうかでした。
一部の調査着手が遅れた点は争われましたが、それでもPICは必要な水準の調査が行われたと認定しました。
このケースが役立つ人
- ひき逃げや相手車両不明事故の請求者
- 保険会社から「探索不足」と言われている人
- ナンバー不明、目撃者情報不足、CCTVが限られる案件
- 遅れの有無ばかり指摘され、実際の調査内容が軽く扱われている争い
PICが見たポイント
- 第2.30条の要件を、実際の事故状況の中で評価したこと
- 調査内容が具体的で、後付けではなく、記録で裏づけられているか
- 遅れが信頼性をどこまで傷つけるかを個別に見たこと
- それでもなお車両特定ができなかったかどうか
実務で残したい証拠
- 警察のイベント番号とその後の連絡記録
- 現場写真、道路状況、接触位置、破片などの記録
- 日付入りの調査タイムライン
- 目撃者、近隣住民、店舗などへの照会記録
- 店舗、住宅、公共交通、自治体などへのCCTV確認記録
- 保険会社とのメールや書面のやり取り
避けたい失敗
- 調査開始を後回しにすること
- 記憶頼みで、日付付きの調査ログを残さないこと
- 「探しました」と言うだけで具体的な裏づけを出せないこと
- ナンバー不明なら請求できないと思い込むこと
申立人向けの実務的メモ
こうした案件では、抽象的な主張より、調査の時系列が強いです。何を、いつ、どこに、どんな結果で確認したのかを第三者が追える形にしてください。
「努力した」と言うだけでは足りません。努力の中身を見せることが重要です。
よくある質問
- Raad v Nominal Defendant [2026] NSWPIC 173 の結論は?
- PICは、加害車両が特定できなくても、申立人がMAIA 2017第2.30条の「相当な調査・探索」要件を満たしたと判断しました。
- ひき逃げ・相手不明事故の請求で何が重要ですか?
- 「車両を特定できたか」だけではなく、「実際にどの調査をいつ行い、どう記録したか」が勝敗を左右します。
- 調査の遅れは問題になりませんか?
- 問題になります。遅れによって証拠の信頼性が落ちたり、後から作った説明に見えたりすると不利です。
- 最低限残すべき資料は?
- 警察届出情報、現場写真、時刻・場所メモ、目撃者探索記録、周辺CCTV照会、保険会社とのやり取り、日付入り調査ログです。
判決ソース
全文:Raad v Nominal Defendant by its agent Allianz Australia Insurance Limited [2026] NSWPIC 173